日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-147
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ポスターセッション
デカブロモジフェニルエーテルは肥満病態の進展に関わる炎症反応を亢進する
*小池 英子柳澤 利枝Tin-Tin WIN-SHWE
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抄録

デカブロモジフェニルエーテル(DecaBDE)は、電気・電子機器用の樹脂や建材、繊維製品等に使用されている臭素系難燃剤である。我々はこれまでに、DecaBDEが食餌依存性肥満症マウスの高血糖を亢進することを報告している(Yanagisawa et al., Toxicology, 2019)。また、脂肪組織の炎症性因子の産生に増加を認めたことから、本研究では、DecaBDEが免疫担当細胞と脂肪細胞の免疫応答に及ぼす影響について検討した。

C57BL/6J雄性マウスは、5-20週齢の間、普通脂肪食または高脂肪食(62.2 kcal% fat)を与え、DecaBDE(0, 0.5, 10 μg/kg/day相当)および溶媒(0.01% DMSO)を飲水にて曝露した。曝露終了後、骨髄液中のケモカインと骨髄細胞のフェノタイプを解析した。加えて、飽和脂肪酸(パルミチン酸)とDecaBDE(0, 1, 5 μg/ml)のin vitro曝露がマウスマクロファージ様細胞株(RAW264.7)に与える変化を解析した。さらに、RAW264.7とマウス線維芽細胞株(3T3-L1)由来脂肪細胞との共培養を行い、DecaBDEが細胞間の相互作用に与える影響を検討した。

DecaBDE曝露した肥満症マウスの骨髄液中SDF-1αおよび骨髄細胞のF4/80、CXCR4、CCR2の発現は低下傾向を示したことから、免疫担当細胞の炎症局所への遊走促進の可能性が示唆された。In vitro曝露では、飽和脂肪酸に誘導されるマクロファージのTNF-α産生やTLR4発現の増強、マクロファージと脂肪細胞の共培養系におけるMCP-1、TNF-α産生の増加や脂肪細胞の脂肪滴の縮小等が観察された。以上より、DecaBDEは肥満病態の進展に関わるマクロファージと脂肪細胞を介した炎症反応を亢進する可能性が示唆された。

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© 2019 日本毒性学会
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