日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-148
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ポスターセッション
サルにおける肝逸脱酵素の臓器・組織分布及びその種間比較
*青木 正美須藤 雄介
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抄録

【目的】 血中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)は、肝機能検査における代表的逸脱酵素であるが、毒性試験で肝臓の病理組織学的変化を伴わないこれら血中酵素活性の上昇に遭遇した場合、肝臓以外の臓器・組織からの逸脱を考慮する必要がある。しかし、毒性試験に使用される動物種の臓器・組織におけるこれら酵素の発現分布及びその動物種差に関する情報は限られている。我々はこれまでに、ラット及びイヌについて諸臓器・組織におけるALT、AST及びGLDHの分布を報告してきた(日本毒性学会年会、2017及び2018)。今回はサルの全身諸臓器・組織におけるこれら酵素の分布について、活性値及びタンパク質発現量(ALT及びASTはアイソフォームとして)の両面から解析を行い、ラットあるいはイヌのそれらと比較した。

【結果】 ASTは肝臓以外の多くの臓器・組織においてその活性とAST1, 2タンパク質の発現を認め、ラット及びイヌ同様に広く全身に分布する酵素であることが明らかとなった。GLDHは肝臓における活性及びタンパク質発現量が他臓器・組織よりも格段に高く、いずれの動物種においても血中GLDHは肝臓が最も主要な由来臓器であり特に筋障害との鑑別に有用と考えられたが、脳、白色脂肪及び腎臓においても発現しておりこれら臓器由来である可能性も考慮する必要がある。ALT活性はいずれの動物種でも骨格筋に次いで肝臓で豊富に認められ、肝障害マーカーとしての特異性はASTと比較して高いことが考えられたが、横紋筋(骨格筋、心臓及び舌)に加え、小腸、脳、腎臓及び白色脂肪などでも酵素活性が認められた。以上のごとく、カニクイザルを用いた毒性試験において、肝障害マーカーとして知られる血中AST、ALT及びGLDHの変化がみられた場合、肝臓以外の臓器・組織由来である可能性を考慮する際の基礎データが得られた。

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© 2019 日本毒性学会
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