日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-194
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ポスターセッション
Trypanosoma brucei に対する有機水銀の殺虫作用
*吉崎 響西村 和彦中川 博史
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抄録

Trypanpspma brucei gambienseがツェツェバエを媒介して人に感染するアフリカ睡眠病の感染リスクを抱える人々は、サハラ以南のアフリカ36カ国で6000〜7000万人程度と推定される。現時点では予防するために有効なワクチンは無く、治療薬はごくわずかである。そのため、安全性が高く安価で投与が容易な治療薬剤の研究が必要とされている。近年では金属を含む医薬品が臨床的に用いられており、寄生虫においても多くの薬物が殺虫作用を改善するために、様々な金属イオンと複合体化されている。そこで本研究では有機水銀化合物をはじめとする金属類がTrypanpspma bruceiの生存に与える影響を解析した。トリパノソーマ用IMDM培地にて培養したTrypanosoma brucei gambiense WSをチメロサール、メチル水銀、ヒ素、コバルトで処置し2-24時間培養後、生存数を調べた。蛍光染色で細胞死とアポトーシスを評価した。殺トリパノソーマ作用が認められた濃度のチメロサールが哺乳類細胞に影響するかを、HepG2細胞、NRK細胞を用いてトリパンブルー染色により評価した。チメロサール処置によって生存率は濃度依存的に低下した。チメロサール0.5μM処置で生存率は時間経過に伴って減少し、24時間後に0となった。同濃度のその他金属では生存率は変化なしあるいは低下した。0.5μMチメロサール処置はHepG2細胞、NRK細胞の生存率には影響しなかった。還元剤であるDTT処置によりチメロサールの殺トリパノソーマ作用は抑制されたため、チメロサールによる酸化作用が関連することが示唆された。pSIVA染色においてシスプラチン処置によりアポトーシスが認められたがチメロサール処置では認められなかったため、チメロサールによる殺トリパノソーマ作用はアポトーシスではないことが示唆された。チメロサールはその殺菌作用によりワクチンの保存剤として使用されており、今後さらなる研究を行うことで抗寄生虫薬としての有用性が期待される。

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