【目的】
発現機序の異なる2種の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルマウス(STHD-01およびCDAHFD供与マウス)の経時的な病態変化について、病理組織学的に比較検討した。
【方法】
雄性C57BL/6Jマウスに当社が開発した高脂肪・高コレステロール食(STHD-01)および市販のコリン欠乏メチオニン減量・高脂肪飼料(CDAHFD)を6~12週間自由摂取させ、その後安楽殺、剖検し、生化学検査および病理組織学的検査(免疫組織染色を含む)を実施した。
【結果・考察】
過栄養のみでNASHを誘発するSTHD-01供与マウスの肝臓では、組織学的に肝細胞の脂肪化は経時的に小滴性から大滴性に移行し、肝細胞核空胞化や過剰な脂肪蓄積により細胞死に陥った肝細胞をマクロファージが取り囲んで貪食する像(hepatic crown-like structures: hCLS)が特徴的で、9週以降より軽度の線維化も観察された。一方、VLDL分泌阻害と過栄養でNASHを誘発するCDAHFD供与マウスでは、肝細胞の脂肪化は供与初期より大滴性を主体とし、hCLSに加え脂肪肉芽腫が特徴的であり、線維化は6週以降から経時的に進行した。血漿中ALT濃度および肝中トリグリセリドは、両NASHモデルマウスで増加した。以上より、STHD-01供与マウスでは、過栄養のみで早期よりNASH病態に類似の病理組織変化を呈することが示された。また、両NASHモデルマウスでは肝細胞の脂肪化、すなわち蓄積する脂肪滴サイズや線維化の進展に違いがあることが明らかとなり、それぞれのモデルの特性の違いを利用した新規メカニズムのNASH創薬への応用が期待できると考えられる。なお、NASHモデルマウスの肝臓以外の全身臓器の病理組織学的検査結果についても、併せて報告する。