【背景、目的】欧州化粧品指令により、欧州では2013年3月以降は動物実験を伴った化粧品が販売禁止となっており、動物を用いない化粧品の安全性評価法の開発が早急に求められている。なかでも全身毒性は代替法開発が極めて難しく、OECDガイドライン等に収載のある試験法はほとんどない。現状では一試験に頼った毒性予測は困難であることから、in vitroやin silicoを組み合わせたWeight of Evidence(WoE)による評価が、お客さまに安全な製品を提供するうえで重要である。本報告では、香料品に使用される原料を題材に挙げ、どのような評価か可能か、生殖発生毒性などの全身毒性を中心とした評価事例(ケーススタディ)を検討した。
【方法】ECHA REACHデータベースなどに記載されている香粧品の既存安全性情報を参考に、香料や化粧品素材数品を選択し、これまでに報告してきたin silico評価系である定量的構造活性相関(QSAR)モデルおよび類似化合物の毒性情報を用いるRead-acrossを用いたリスク評価を実施した。また、ハザード評価としてin vitro評価系であるHand1-Luciferase Embryonic Stem cell Test (Hand1-EST)などの試験法を実施した。得られた結果を既存の安全性情報と比較した。
【結果、考察】今回、ケーススタディに用いた香粧品素材の代替法による評価では、既存の安全性情報と大きく変わらない評価結果を得ることができた。以上の結果より、曝露量やin silico、in vitro解析など複数の情報を組み合わせることにより素材の安全性について総合的に判断し説明することが可能であることが示された。