【背景】我々はシトクロム P450 (CYP) 3A4がUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) 2B7と相互作用することにより、CYP3A4の酵素活性をはじめとする触媒サイクル全体が低下することを報告した (Miyauchi et al, Mol Pharmacol, 2015)。本研究では別のUGT分子種であるUGT1A9がCYP3A4活性に与える影響に加え、ラット肝臓中におけるCYP3A-UGT1A相互作用の解析を行った。
【方法】バキュロウイルス-昆虫細胞発現系を用いてCYP3A4、NADPH-CYP reductase、UGT1A9の共発現系を構築した。組換えウイルスを感染させた細胞からホモジネートおよびミクロゾームを調製し、UGT1A9の共発現の有無でCYP3A4活性を比較した。In vivoにおけるCYP3A-UGT1A相互作用の解析では、5週齢のWistar雄性ラットにグルココルチコイドの一種であるdexamethasoneを投与し、肝臓におけるCYPおよびUGTを誘導させた。摘出した肝臓からミクロゾームを調製し、CYP3AおよびUGT1Aをイムノブロットで定量したのち、CYP3A活性を測定した。
【結果・考察】UGT2B7の場合と同様、UGT1A9の共発現は、CYP3A4活性を有意に抑制した。また、酵素反応速度論的解析の結果、UGTによるCYP3A4活性の抑制機構はUGTの分子種依存的であることが明らかとなった。さらに、dexamethasoneを投与することによりラット肝臓中のCYP3Aは10倍、UGT1Aは4倍誘導された。単位CYPあたりのCYP3A活性がdexamethasone処理により2倍程度上昇したことから、薬物を用いた誘導によりラット肝臓内のCYP3A-UGT1A相互作用が部分的に解除されることが示唆された。