【背景】近年、飲酒や高脂肪食の摂取などに起因する肥満によって肝臓に脂肪が蓄積し、その後、脂肪肝炎を経て肝硬変へと進行する人が増加している。また、飲酒歴のない人にも非アルコール性脂肪肝(NASH)と呼ばれる脂肪肝が起き、将来的に肝硬変・肝がんに進行することが明らかになってきており、国内で約1千万人の罹患者がいると考えられている。NASHは確立した治療法が存在せず、肝臓が線維化した病態では致死的になる可能性があることから、新規治療法の開発が求められており、これまでとは違う病態へのアプローチ方法が必要とされている。
【目的】そこで本研究では、NASH病態モデルマウスの肝臓組織由来オルガノイドがNASH研究の有用なツールになることを示すとともに、NASH肝臓オルガノイドを用いた発症メカニズムの解明および新規治療法開発につなげることを目的とする。
【方法】6週齢のB57BLマウスにコリン欠乏およびメチオニン減量高脂肪食を4, 8, 12週間給餌し、進行度の違うNASH病態モデルマウス群を作製した後に肝臓を摘出し、病理組織学構造を解析するとともに、三次元オルガノイド培養を行い肝臓オルガノイドの作製を行った。
【結果・考察】培養開始後2週間で、コントロール飼料を給餌したマウス、高脂肪食を給餌したマウスの肝臓組織由来のオルガノイドの形成がみられた。各オルガノイドにおいて、肝細胞マーカーであるアルブミンの発現が認められた。4つのグループのなかでは、高脂肪食4週間給餌のマウス由来の肝臓オルガノイドが最も高いオルガノイド形成能を示した。また、高脂肪食12週間給餌のマウス由来の肝臓オルガノイドは、他のグループとは異なるアメーバ状の形態が見られた。以上の結果から、NASH病態モデルマウスの肝臓組織由来オルガノイドが新たな研究ツールとなる可能性が示唆された。