日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-86S
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ポスターセッション
PXB-cellsを用いたミトコンドリア毒性に起因する肝細胞毒性評価系の構築
*池山 佑豪関根 秀一石田 雄二立野 知世劉 聡伊藤 晃成
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抄録

【目的】ミトコンドリア毒性は薬物性肝障害の要因の一つとして注目されている。我々は、ラット初代培養肝細胞において培養糖源をグルコースからガラクトースに置換(糖源置換)することに加え、酸素供給量を増加させることで、ミトコンドリア毒性に伴う細胞死を検出できることを報告している。ヒトでの毒性予測を行う上ではゴールデンスタンダードとされる凍結ヒト肝細胞に本手法を適用することが望ましいと考えられるが、ロット間差や凍結によるミトコンドリアダメージが懸念される。ヒト肝キメラマウスより単離した新鮮初代培養肝細胞(PXB-cells)ではこれら問題を回避できると期待されたため、本研究では凍結ヒト肝細胞とPXB-cellsを用い、両細胞について糖源置換に基づくミトコンドリア毒性評価手法の適用が可能か検討した。【方法】凍結ヒト肝細胞とPXB-cellsをサンドイッチ培養し、培養糖源をグルコースからガラクトースへと置換した。凍結ヒト肝細胞では糖源置換による細胞死が顕著で、その後の培養困難であった。一方、PXB-cellsでは糖源置換後も培養維持が可能であった。そこで、PXB-cellsについてのみ酸素消費と乳酸産生量を測定し、糖源置換に応じたミトコンドリア機能の変化を評価した。同様に、PXB-cellsに呼吸鎖複合体阻害が知られる薬物(トログリタゾン・フルタミド・ロテノン)を曝露した時の細胞死を、乳酸脱水素酵素(LDH)漏出およびATP量の変化で評価した。【結果】PXB-cellsでは糖源置換により乳酸産生量の低下、酸素消費量の増加が確認され、エネルギー産生における酸化的リン酸化の寄与の増大が確認された。一連の呼吸鎖複合体阻害薬物の曝露時に見られたLDH漏出およびATP量の減少は、共に糖源置換した条件でより顕著に認められた。これら毒性は陰性対象薬物では確認されなかった。【結論】PXB-cellsは糖源置換培養が可能であり、これによりミトコンドリア機能が亢進し、呼吸鎖複合体阻害機序に基づく薬物毒性を鋭敏に検出できると考えられた。

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© 2019 日本毒性学会
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