日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S15-2
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シンポジウム 15
ゲノム編集を用いた遺伝子治療製品の開発状況や安全性評価の在り方について
*山口 照英内田 恵理子
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抄録

 Zinc-Finger-Nuclease(ZFN)やTALENといったゲノム編集が遺伝子治療の新たなツールとして登場し、従来の遺伝子治療と異なり目的遺伝子のそのものを改変できる究極の遺伝子治療技術として先天性遺伝子疾患の治療をはじめ様々な疾患に対する開発が進んでいる。ZFNやTALENは目的遺伝子へのターゲッティングや設計など高度な技術を必要としていが、微生物の生体防御システムであるCRISPR/Casの登場により目的遺伝子への特異性を決定付けるガイドRNA(sgRNA)を設計するだけで目的とする遺伝子の切断や改変が非常に容易にできるようになり、開発が急速に広がっている。 これまで40を越えるゲノム編集を利用した臨床試験がNIH-Clinical-Trialのデータベースに登録されているが、その多くがCRISPR/Casを利用している。

 CRISPR/Casは遺伝に改変のデザインの容易さがある一方で、当初より目的外とする遺伝子の改変をするオフターゲット効果について懸念がだされていた。類似した配列に対する切断や改変が行われるリスクをどのように評価するか多くの手法が開発されている。オフターゲット効果を低減化するためのsgRNAの設計や長さの調製などによる低減化などの報告があるが、オフターゲット効果の解析手法の限界も指摘されている。一方で、オフターゲットの他、遺伝子の切断に伴う染色体の転座や欠失などの変異や相同組換えを目指した改変でのP53の変異が起きやすい事等などが報告されている。

 本発表では、ゲノム編集による遺伝子治療の国内外の開発状況についてオーバービューすると共に、ゲノム編集を適用する際の安全性の課題について議論を行いたい。さらに、ゲノム編集の上記のようなリスクを低減化する様々な改良が行われており、遺伝子治療としての規制的要件をどのように適用していくべきかについても考察したい。

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