ヒトを含む動物の行動を「数値化」する事は本学会でも重要な研究テーマの一つと思われる。本研究は「脳機能の最終的なOUTPUTでもある『行動』を詳細に解析することで、脳の理解に繋がるのではないか」という仮説がスタートであった。最新の加速度センサは、小型で消費電力も少ないためウェアブルセンサとして長時間の測定が可能となり、スマートホンはもちろん、従来からある地震計、車のエアーバックスイッチ、機械の異常検知にも広く利用されており、我々の生活の中に深く浸透している。さらに、「バイオロギング」と言われる動植物の動きを記録するセンサとしても広く使用されている。筆者は小型化・無線化された加速度センサを使いて牛の歩様を定量化・可視化し、跛行治療評価、予後判定に関する研究を皮切りに、ヒト、ラット(一部埋め込み)、犬、馬の歩様・行動解析を行ってきた。また、EAPセンサ(超薄型ピエゾ型圧力センサ)を利用した牛乗駕行動やヒト嚥下動作などの解析を行った。本発表では、対象となる動物の動作・行動のセンサデータから解析した「特徴量」について紹介し、機械学習を用いた判別解析の事例も紹介する。
ここ数年間でデータ送信方法は特定小電力無線、Bluetooth、そして900 MHz帯域を中心としたLow Power Wide Area(LPWA)による長距離送信が可能となり多個体データの同時収集が容易となった。さらに5G やNarrow Band-Internet to Thing(NB-IoT)を利用することで、大量データをリアルタイムにサーバー収集することが安価となる。今後、実験動物から得られる大容量データの収集と機械学習やAIを使った解析とのシナジーが求められる。IoTを利用した産業動物管理用データ収集と情報報知システムの知見から、実験動物からヒトまでの一貫した行動解析への応用についても考えてみたい。