私たちは、2011年に精巣器官培養法を用いて、マウスのin vitro精子形成に成功しました。その成功の秘密は、牛胎仔血清の代わりに血清代替製品(KSRもしくはAlbuMAX)を培養液に添加したことでした。このことは、in vitro精子形成に必要な重要因子が、すべてそれら代替血清の中に含まれていることを意味しています。それ故、それら重要な因子を同定するための研究を開始しました。レチノイン酸、ホルモン(テストステロン、LH、FSH、トリヨードサイロニン)、さらには様々な脂質が必要であることが分かってきました。そのような因子を組み合わせることで、in vitro精子形成を誘導し、重要な因子を同定する研究を紹介します。
一方、従来の器官培養法には限界があることから、生体内環境により近い培養技術の開発も行っています。その一つが、マイクロ流体システムを導入した培養デバイスの開発です。これにより、培養組織片への栄養供給と酸素供給を調整し、長期間の培養も可能となりました。また、マイクロ流体デバイスの材料素材であるPDMSを組織片に被せるだけの方法でも、精子形成を誘導でき、かつ未成熟精巣組織片を生体内とほぼ同様に成長させることができるようになりました。このような新しい器官培養法の成果を紹介します。