薬物性肝障害(Drug-induced Liver Injury; DILI)は新薬開発における臨床試験の中止、もしくは市販後の市場撤退の主要な原因であり、予測性の高い評価系が求められている。薬物性肝障害の評価としては、肝細胞を用いた2D培養系や動物試験などが用いられているものの、必ずしもヒトの生体での反応を示していないことが知られている。そのため、ヒトの細胞を用いた3D評価モデルの構築が求められているものの、生体内の複雑な構造・機能を再現することは困難であった。
Organovo社が開発したExViveTMヒト3D肝臓組織は、3種類(肝細胞、肝星細胞、内皮細胞)もしくは4種類(肝細胞、肝星細胞、内皮細胞、クッパー細胞)のヒト細胞で構成された三次元組織モデルである。独自のバイオプリンティング技術を用いることで生体内に類似した構造や、長期的な代謝活性の維持が確認でき、2D培養系では困難な薬剤の長期投与による影響を評価することが可能である。また、動物試験と同様に組織染色を利用した評価も行うことができ、薬剤誘発性の線維症などの評価にも利用できる。
本発表では、Organovo社ExViveTMヒト3D肝臓組織を用いたいくつかの評価実施例と、その有用性について紹介する。