日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-2
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シンポジウム 6
ナノ 酸化チタンの肺毒性
*梅田 ゆみ笠井 辰也山野 荘太郎平井 繁行竹内 哲也大西 誠相磯 成敏菅野 純
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抄録

 酸化チタンは白色顔料として工業的に生産されて約100年、塗料やインキ、プラスチック、紙、繊維、化粧品など幅広い用途で使用されている。1980年代よりナノサイズの粒子(一次粒子径が100 nm以下)の開発が進み、ナノ酸化チタン(TiO2NP)の平成29年度国内製造量は6,059トン(日本酸化チタン工業会集計)に達する。TiO2NPは従来の顔料グレードの酸化チタン(粒径200~300 nm)にくらべ、比表面積が増大し光触媒活性が強いことや、光吸収や散乱特性が変化することなどによる新たな特性が付与されている。毒性学的には、この新たな特性が、顔料グレードとは異なる影響を生体に及ぼす懸念が指摘されている。特に、職業曝露の面からは、TiO2NPを製造する現場における吸入曝露が最も重要であると考えられた。

 WHOの国際がん研究機関は2010年に、酸化チタンの肺に対する発癌性を評価し、「ヒトに対して発がん性の可能性がある」とする2Bに分類している(IARC, 2010)。この際に評価された毒性データは、高濃度(250 mg/m3)の顔料グレード、及び、TiO2NPの1群のみの長期吸入曝露試験(10 mg/m3)での肺発癌を根拠としている。厚生労働省としては、TiO2NPの職業健康障害の予防の観点から複数用量を設定したフルスケールの発癌性試験を実施する事とし、日本バイオアッセイ研究センターにおいて、アナターゼ型TiO2NP(30 nm)のラット全身吸入曝露長期発がん性試験(F344ラット、雌雄50匹/群、8 mg/m3、2 mg/m3、0.5 mg/m3)を実施中である。

 本シンポジウムでは、それに先立ち実施した用量設定試験(最高50 mg/m3、公比2計4群)における、Ⅱ型肺胞上皮の増殖性変化等の病理組織学的変化を報告し、既に当所で経験した粒子状物質(MWCNT、インジウム等)の吸入所見との対比を含め、その成立過程と発癌性との関係を考察する。(厚労省運営交付金事業による)

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