日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-1
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シンポジウム 6
セルロースナノファイバーの気管内投与手法の開発
*藤田 克英丸 順子遠藤 茂寿小原 佐和枝
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抄録

新素材として多様な応用が期待されるセルロースナノファイバー(CNF)の社会実装化を加速させるためには、CNFの安全性の評価が求められるが、その有害性試験手法が未確立である。ナノマテリアルの吸入影響に関する有害性評価として、げっ歯類を使った吸入暴露試験があるが、多大な費用と時間が必要となるため多くの被験材料について実施することは困難である。そのため、簡易な器具と少量の被験材料で実施可能であり、肺への投与量を厳密に設定できる気管内投与試験は、多様なCNFの吸入毒性試験として有効な手法と考える。しかしながら、CNFを被験材料とした気管内投与試験の報告はこれまでなく、また、CNFはゲルとゾルの中間的な性質を持ち、粘度が時間経過やせん断応力とともに変化する(thixotropy)ことから、適切な気管内投与手法の確立が必要と考える。本発表では、現在以下の目的に従い実施中のCNFの気管内投与手法の開発について紹介する。

(1)スラリー状のCNFの物理化学的特性を損なわない状態で分散調製する技術を確立する。

(2)気管内投与後、CNFの粘性等により、げっ歯類に窒息や行動異常などが引き起こされ、気管内投与後の適切な有害性評価ができない場合が予想される。このため、CNF試料を投与後、数日間のラットの状態を観察し、気管内投与が可能なCNF試料の濃度や投与条件を確立する。

(3)気管内投与後の肺各葉でのCNFの抽出と分析を実施し、気管内投与後の肺に被験材料が一部に偏在せず、一様に分布することを検証する。

本発表は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/CNF安全性評価手法」の結果から得られたものである。

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