日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: SL3
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特別講演
金属アレルギー:金属イオンに対する免疫応答
*黒石 智誠
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抄録

 金属アレルギーは細胞性免疫依存のIV型アレルギーに分類され、接触性皮膚炎などの臨床症状を呈する。様々な金属アレルゲンのうち、ニッケル(Ni)は、抗原性検査における陽性率の高さなどから最も重要視されている。一方、金属アレルギーの治療には「原因金属の除去」という古典的とも言える手法が標準的に用いられているのが現状である。このため、金属アレルギーの病因論にもとづいた、新たな予防・治療法の開発が望まれている。

 我々の研究室では、グラム陰性菌の菌体成分であるリポポリサッカライド(LPS)をアジュバントとして用いる金属アレルギーマウスモデルを開発し、金属アレルギーの病態解明と治療法の開発に取り組んでいる。本マウスモデルでは、LPSを含む金属イオン溶液の腹腔内投与により金属に対する特異免疫を誘導する(感作相)。そして、耳介に金属溶液を皮下接種し(チャレンジ)、耳介の腫脹を指標としてアレルギー反応を測定する(惹起相)(Sato N. Clin. Exp. Allergy 2007; 37: 743-751.)。

 金属イオンは単独では抗原性を発揮せず、何らかの自己分子と結合することにより免疫応答を惹起するハプテンとして機能すると考えられている。近年、我々は、ケモカインの一種であるCXC chemokine ligand 4が新規Ni結合タンパク質であり、感作相および惹起相のいずれにおいてもNiアレルギーを増強することを報告した(Kuroishi T. Clin. Exp. Allergy 2017; 47: 1069-1078.)。

 さらに、金属イオン蛍光プローブを用いた解析から、皮膚所属リンパ節の遊走性樹状細胞は高いNi結合能を示し、Niアレルギーの惹起能を有することを明らかにした。

 本講演では、我々の研究成果を紹介するとともに、金属アレルギーの新たな予防・治療法の可能性について考察したい。

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