日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-171
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組織検査を実施せずに、肝毒性マーカーのみで中止判断が可能なカットオフ値
*添田 三晴殿村 優西川 雄樹橘内 陽子小寺 喬小西 静香隈部 志野松井 龍宣沼倉 佑樹岡本 健太郎柴山 寛司上田 誠佐藤 恵一朗山下 康弘
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抄録

【背景】一般毒性試験において、病理組織学的検査は毒性の有無を判断する上で極めて重要な検査であるが、検査及び評価に時間を要する。本研究では、探索段階における候補品選定の効率化を目的に、肝障害の汎用的なバイオマーカー (BM) の変動と病理組織学的所見の一致性について統計学的に解析し、創薬初期試験の病理組織学的検査を省略しても中止判断が可能となるBMカットオフ値について検討した。

【方法】雄マウス4日間反復経口投与試験に供した355個体 (媒体投与85例、被験物質(57種類)投与270例) から取得した血液化学的検査データ [AST、ALT及び総ビリルビン (T.Bil)]、並びに被験物質の投与に起因すると判断した肝臓の病理組織学的検査データを解析対象のデータセットとした。各BMにおいて、被験物質起因性のBM変動の有無との関連性が有意となる病理所見をFisherの正確検定により特定し、特定した病理所見のうち壊死など毒性学的意義の高い変化を抽出して、最終的なデータセットとした。解析にはROC曲線を用い、本解析データにおいて偽陽性率が1%となる時のカットオフ値、及び各BMの性能の指標としてROC-AUCを求めた。

【結果】AST=163 IU/L (ROC-AUC=0.94)、ALT=256 IU/L (ROC-AUC=0.93)、T.Bil=0.39 mg/dL (ROC-AUC=0.92)となった。また、AST及びT.BilあるいはALT及びT.Bilの組み合わせにより、偽陽性が相互に補完され、偽陽性を完全に排除することができた。以上より、肝毒性で汎用されている血液化学的検査の項目を統計学的な解析に基づいて組み合わせることで、創薬初期において肝臓の病理組織学的検査を一部代替できることが示唆され、病理組織学的検査の結果を待つことなく医薬品開発の意思決定が可能になると考えられた。

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