主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
【目的】吸入麻酔法は注射麻酔法に比べ短時間、長時間にかかわらず麻酔深度の調節が容易で、短時間で覚醒させることが出来る安全な全身麻酔法である。吸入麻酔薬イソフルランは動物実験でよく使用されているが、2019年夏に入手が困難になり、弊社も影響を受けた。2019年の教訓から、イソフルラン以外の吸入麻酔薬を用いて、ラットの血液学及び血液生化学的検査への影響を検討したので報告する。
【方法】11週齢のラット(雌雄、Slc:SD)を使用した。イソフルラン(導入3%、維持1.5~3%)、若しくはセボフルラン(導入4~5%、維持3~4%)吸入麻酔下で腹大動脈より採血し、血液学及び血液生化学的検査を実施した。
【結果】血液学的検査において、イソフルランと比較してセボフルランにMCV、MCH及びMCHCの増加、及び、PT及びAPTTの遅延が認められた。血液生化学的検査において、イソフルランと比較してセボフルランに増加若しくは減少示す項目が散見された。
【考察】セボフルランにより赤血球恒数と血液凝固に変化が見られた。セボフルランにはヒト血小板凝集を抑制するが血液凝固時間には影響しないと報告されているが、ラットでは全血凝固時間を延長させるとの報告もあり、今回のPT及びAPTT延長もセボフルランの影響と考えられた。また、ウサギ赤血球の低浸透圧性溶血に対する抑制作用を示すとの報告もあり、今回の赤血球恒数の変化もセボフルランの影響と考えられた。
現在、8週齢のラットについても同様に検討中である。