主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
【背景及び目的】我々は海馬歯状回 (DG) の神経新生障害性をエンドポイントとして、様々な物質の発達神経毒性評価を実施してきた。アルミニウムは環境、食料、飲料水に自然に存在し、食品、医薬品に添加物としても含まれ、成人および幼児に神経毒性を示すことが知られている。本研究では、DGの神経新生に対する塩化アルミニウム(AlCl3)の発達期曝露の影響を評価した。
【方法】妊娠ラットに妊娠6日目から出産後21日目 (PND 21) まで0、0.25%、0.5%の濃度でAlCl3を飲水投与し、母動物をPND 21に、雄児動物をPND 21およびPND 77に解剖した。雄児動物について免疫組織化学的解析により、DGの顆粒細胞層下帯(SGZ)/顆粒細胞層 (GCL) の顆粒細胞系譜の分化状況、細胞増殖とアポトーシスおよび神経可塑性、海馬歯状回門 (Hilus) の介在ニューロンの分布を検討した。
【結果】0.5%群の母動物では、体重、摂餌量、摂水量の低値、児動物では一過性の体重の低値が見られたが、脳重量に影響はなかった。0.5%群の児動物でPND 21にTBR2+細胞が増加したが、PND 77には回復した。
【考察】AlCl3の発達期曝露は、曝露終了時にtype-2からtype-3神経前駆細胞の増殖及び分化を促進または未熟顆粒細胞への分化を抑制している可能性が考えられた。我々の過去の研究でAlCl3をマウスに発達期曝露したところ、PND 21にSGZでTBR2+細胞とDCX+細胞の増加、GCLでCOX2+細胞の増加、Hilusでparvalbumin+介在ニューロンの増加が見られ、神経前駆細胞及び未熟顆粒細胞の増殖と分化の促進が示唆された。本研究で見られたラットのTBR2+細胞の増加も同様のメカニズムによると考えられた。一方、マウスで見られたPND 21のGCLのアポトーシスの増加、PND 21及びPND 77のSGZのGFAP+神経幹細胞の減少、Hilusのreelin+介在ニューロンの減少は、ラットでは見られなかった。今後遺伝子発現も含め、検討する予定である。