日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-235
会議情報

ポスター
CMOS-MEAを用いたin vitro 末梢ニューロンの軸索伝導計測
高橋 さゆり加藤 祐理小田原 あおい松田 直毅田浦 忠行大池 祐輔*鈴木 郁郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

[イントロダクション] 医薬品の毒性である末梢神経障害の中に、軸索障害や髄鞘障害があり、軸索伝導速度の変化が生じる。in vitroで軸索伝導速度を指標とした薬の評価ができれば、毒性評価の新規プラットフォームとなる可能性があるが、軸索伝導速度計測には、高時空間分解能計測が必要である。今回我々は、電極間ピッチ11.72μm、合計1万電極以上のCMOS-MEAを用いて、Rat DRGニューロンにおける1細胞内の軸索伝播計測および薬剤投与による伝導速度の変化の検出を試みた。

[方法] PEIおよびラミニンコートを施したCMOS-MEA上に、ラット(10週齢)より採取したDRGニューロンを1×105 cells/cm2の密度で播種した。非神経系グリア細胞の増殖を抑制するため培養1日目から3日間、10μM-Uridineおよび10μM-2'-Deoxy-5-fluorouridine処理をした。培養2週~6週目に自発活動を計測し、顕著な軸索伝導が観察されたサンプルに対して、過剰興奮を誘発する 4-AP を30μMで投与した。また、抗がん剤の一種で末梢神経毒性を引き起こすことが知られているビンクリスチンを10nMで一晩暴露した。

[結果] 自発活動計測により、細胞体から発生した活動電位が1細胞の軸索内を伝播する様子が100電極以上で計測された。また、分岐した軸索に伝導する様子や培養日数経過と共に伝播経路の拡大が観察された。更に、軸索伝導速度は、軸索起始部と末端部分で異なることもわかった。次に、薬剤投与による軸索伝導速度の変化を検出する為に、膜電位を上昇させる作用を持つ4-AP投与実験を行った結果、軸索伝導速度が投与前に比べて有意に上昇した。膜電位上昇により、伝導速度が上昇したと考えられる。また、ビンクリスチン投与によって相対軸索伝導速度は 20%程度低下した。

[まとめ] 高時空間分解能を有するCMOS-MEA計測法によって、Rat DRGニューロンの軸索伝導速度および伝導パターンを検出し、4-APおよびビンクリスチン投与によって伝導速度の変化を検出した。本計測法は、軸索内伝導速度を指標としたin vitroの薬効および毒性評価法として有効であると考えられる。

著者関連情報
© 2020 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top