主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
【目的】我々は、腎近位尿細管細胞株HK-2において、核内受容体LXRが細胞分化の初期化マーカーOct3/4の発現を制御していることを見出した。また、LXRのサブタイプ LXR-alpha、LXR-beta は相互に発現を制御することが明らかになっている(Fujino et al, J.Toxicol.Sci., 2020)。今回、LXR-alpha、LXR-beta の相互発現制御についてさらに解析するとともに、LXR-alpha、LXR-beta の双方を活性化する作用をもちながらもLXR-alphaの発現のみを低下させる化合物について検討を行った。
【結果・考察】ヒト正常肝細胞株Fa2N-4においてLXR-alphaを高発現させたところ、LXR-beta の発現が増大した。一方、LXR-betaを高発現させたところ、LXR-alpha の発現が増大した。LXR-alphaの高発現がLXR-beta の発現低下をもたらす腎細胞株HK-2とは異なり、ヒト肝細胞では、LXR-alpha、LXR-beta が相互に発現を高め合っていると考えられる。また、強心配糖体 ouabain のアグリコンである ouabagenin (OBG)は LXRのアゴニストであるが、LXRアゴニスト特有の脂肪肝を引き起こさないことが知られている。この理由について調べるため、Fa2N-4 細胞を OBG で処理したところ、LXR-alphaの発現が低下し、脂肪酸生合成酵素の上流因子である SREBP-1の発現が1.5倍となり、合成LXRアゴニストGW3965処理時(11倍)に比べて軽微にとどまった。したがって、OBGは、LXR-alphaの発現を低下させることにより、LXR-alpha、LXR-beta の相互発現増大がもたらす脂肪酸生合成促進を回避するLXRアゴニストであると考えられる。