日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-74S
会議情報

ポスター
TGF-β1による培養血管内皮細胞の活性イオウ分子産生酵素の発現調節を担う細胞内シグナル経路
*髙橋 結藤江 智也髙橋 茜山本 千夏鍜冶 利幸
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】血管内壁を一層に覆う血管内皮細胞は,血中に入った化学物質の標的となるので,内皮細胞における生体防御機構の解明は重要である。TGF-β1は内皮細胞機能を調節するサイトカインの1つである。本研究では,細胞防御因子として“活性イオウ分子”に着目し,TGF-β1によるその産生酵素群(CSE,CBS,3-MSTおよびCARS2)の発現調節とそれを担う細胞内シグナル経路を解析した。

【方法】培養ウシ大動脈内皮細胞にTGF-β1を処理し,活性イオウ分子産生酵素群の発現をWestern blot法およびReal-time RT-PCR法により検討した。

【結果および考察】血管内皮細胞においてTGF-β1は濃度および時間依存的にCSEおよびCBSの発現をmRNAおよびタンパク質レベルで選択的に上昇させた。RNA干渉法による解析の結果,TGF-β受容体のうちALK5がTGF-β1によるCSEおよびCBSの発現上昇を介在することが示された。ALK5下流に位置するSmad2,Smad3およびSmad4 siRNAsを導入したところ,いずれもTGF-β1によるCSEおよびCBS発現上昇が抑制された。non-Smad経路としてMAPK経路およびAkt経路を検討したが,TGF-β1によるCSEおよびCBSの発現上昇への関与は認められなかった。一方,TGF-β1は転写因子ATF4の発現を上昇させた。そこで,ATF4の発現をsiRNA導入により抑制したところ,TGF-β1によるCSE/CBS発現上昇が抑制された。TGF-β1によるATF4発現上昇は,Smad2またはSmad3発現抑制により抑制された。以上より,内皮細胞においてTGF-β1はALK5-Smad2/3/4経路およびALK5-Smad2/3-ATF4経路を介してCSE/CBS発現を誘導することが示唆された。

著者関連情報
© 2020 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top