日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-7S
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シスプラチンにより惹起される急性腎障害の感受性時刻差について
*富永 サラ吉岡 弘毅坂梨 まゆ子前田 徹吉川 昌江朴 相俊三浦 伸彦
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抄録

【目的】生物は概日リズムに支配されており、毒物や薬物に対する生体反応機構もこれに左右されると予想される。我々はこれまでに、金属曝露の毒性発現強度が投与時刻に依存していることを報告してきた(Yoshioka et al, J Toxicol Sci, 43 (2) , 129-134, 2018)。シスプラチン(CDDP)は白金錯体抗悪性腫瘍剤として広く使用される一方、副作用として急性腎障害を惹起することが知られているが、その発現頻度の時刻依存性や組織障害の程度は解明されていない。そこで、曝露時刻の違いにより、CDDPによる致死および急性腎障害の障害度に差が認められるか否か検討した。

【実験方法】(1)7週齢のICR系雄性マウスを10時から4時間ずつ時刻をずらした6群に分け、CDDP(20 mg/kg)を6時刻にそれぞれ単回腹腔内投与し、投与14日後までの生存数および平均生存日数を算出した。(2)無処理(通常状態)マウスにおける、腎臓中の細胞内取り込みトランスポーター(OCT2)の定量PCRを行った。(3)10時(明期)と22時(暗期)の2群にCDDPを単回腹腔内投与し、72時間後に解剖し、血液および腎臓を用いて各種パラメーターの解析を行った。

【結果及び考察】(1)生存数および平均生存日数より、14時-22時の間では毒性感受性が高く、6-10時では毒性感受性が低い結果となった。このことから、過去の報告と同様にCDDPにおいても、致死率に時間依存性が認められた。(2)OCT2のmRNA発現量は差が認められなかったことから、CDDPの細胞内取り込み量では無く、取り込まれた後の挙動によって腎障害の程度に差が出ると考えられた。(3)明期に比べ暗期のCDDP投与群では、腎機能低下や酸化ストレス上昇、炎症関連遺伝子の上昇、壊死および腎損傷関連タンパク量の増加、糸球体や近位尿細管の傷害程度、DNA 損傷程度など多岐に差が認められた。そのため、ヒトにおいてもCDDP毒性発現強度が変化する可能性が示され、CDDP投与時刻の計画を考証する上で重要な因子となりうる。

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