日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-2
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シンポジウム10
発達期マウスへのドーモイ酸投与による成熟後の神経行動毒性発現~海産毒による異常誘発モデルとしての検討2~
*種村 健太郎佐々木 貴煕齊藤 洋克高橋 祐次北嶋 聡菅野 純
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抄録

 記憶喪失性貝毒とされるドーモイ酸はグルタミン酸のアゴニストでありグルタミン酸受容体と強く結合する。毒化した貝類は外見からは判別できず、また一般的な調理加熱では毒素は分解しないことから、現時点では有効な中毒対策法はないとされる。実際に成熟した実験動物へのドーモイ酸投与は海馬依存性の記憶障害を誘発することが知られている。

 グルタミン酸は中枢神経系における主たる興奮性神経伝達物質であり、その受容体への適切な刺激は発生期の脳形成においても重要な役割を演じているとされることから、第46回大会におけるシンポジウム『海産毒リビジテッド』では、妊娠マウスへのドーモイ酸を投与し、得られた雄産仔マウスに認められる成熟後の行動異常として重篤な記憶障害をはじめ、不安関連行動異常やプレパルス驚愕反応抑制異常、そしてそれらに対応する神経科学的所見について紹介した。すなわち、発生期マウスの脳におけるグルタミン酸受容体の過剰刺激が脳微細構造形成に影響を及ぼし、成熟期マウスへの投与影響とは異なる脳機能変調を誘発することを実験的に示した。

 本シンポジウムでは、発達期マウスとして離乳前の生後2週齢マウスを用いて、ドーモイ酸投与による成熟後の中枢神経影響についての検討とともに、ドーモイ酸中毒への対応策の開発に向けた実験的取り組みについて紹介したい。

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