日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第49回大会
セッションID: P1-24
会議情報

損傷・修復(回復・DNA損傷・修復関連遺伝子[酵素]・遺伝病)
DNA-タンパク質クロスリンク誘発剤に対するヒト培養細胞の感受性
*龍本 考弘西村 はる菜寺東 宏明井出 博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
放射線は,DNAに酸化損傷や鎖切断を生じるが,他の損傷としてDNA-タンパク質クロスリンク(DPC)やDNA鎖間のクロスリンクも生じることが知られている。さらに,これらの損傷は,アルデヒド化合物や白金化合物の処理などでも生じる。しかし,これらの損傷に対する修復機構は,酸化損傷や鎖切断の修復に比べ不明な部分が多い。DPCは,ヒストンや転写因子などと異なり,DNA鎖にタンパク質が共有結合で固定されているため,立体障害によりDNAおよびRNAポリメラーゼの進行を阻害し,複製や転写に大きな影響を与えると予想される。当研究グループでは,原核生物のUvrABCタンパク質および修復欠損株を用いてDPC修復機構を検討した。その結果,UvrABCのin vitro DPC除去活性はクロスリンクタンパク質のサイズに依存し変化すること,さらにin vivoにおけるDPC修復には,ヌクレオチド除去修復(NER)および組換え修復の関与が示唆された。本研究では,ヒト培養細胞のDPC修復機構を検討した。DPC損傷生成の特異性が高いと考えられるformaldehydeおよび5-aza-2'-deoxycytidineで細胞を処理し,コロニー形成法により生存率を求めた。formaldehydeは塩基およびタンパク質のアミノ基が架橋したDPC,また,5-aza-2'-deoxycytidineはDNAに取り込まれ5-azacytosineとCpGメチル化酵素が架橋したDPCを形成する。予備実験では,野生株に比べNER欠損株はformaldehydeに対しわずかな感受性を示した。この結果は,大腸菌においてNER欠損株と野生株の間に明確な感受性の差が認められたのと異なっている。今後5-aza-2'-deoxycitidine感受性を含め,より詳細な検討を行い,その結果を報告する。
著者関連情報
© 2006 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top