日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S12-1
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シンポジウム12
食品中微量化学物質のリスク評価へのインシリコ手法の適用
*小野 敦
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抄録

食品中には、食品添加物など意図的に添加される化合物、農薬や食品接触材料からの溶出物、環境汚染物質など非意図的に含まれる可能性のある化合物、さらには天然に存在する化合物など、様々な化学物質が含まれている。我々は食事を通じて、生涯にわたってそれらの化学物質を摂取する可能性があることから、リスク評価に基づく安全性の確保は重要である。食品添加物や農薬については、様々な毒性試験が要求され、その結果をもとに許容一日摂取量(ADI)が設定されているが、それら以外の数千種を超える化学物質について入手可能な毒性情報は限られている。そうした化学物質の大半は食品中濃度は非常に低く、それら全てについてのリスク評価を従来の毒性試験により行うことは現実的ではない。近年、毒性試験情報が限られている食品中微量化学物質のリスク評価において、蓄積されたナレッジをもとにした計算科学的手法すなわちインシリコ手法が用いられ始めている。毒性学的懸念の閾値(TTC:Threshold of Toxicological Concern)アプローチは、全ての化学物質もしくはある化学物質群について有害影響が無視できるヒト暴露の実用的な閾値を設定してリスク評価に用いる手法であり、JECFAにおける香料物質の評価やJMPRの農薬代謝物の評価、我が国の農薬の一律基準設定や食品香料の評価および2020年より始まる食品用器具容器包装関連化学物質のポジティブリスト制度(PL制)におけるリスク評価に取り入れられている。一方、変異原性の評価においては、構造活性相関や毒性アラートに基づくインシリコ予測モデルによる評価が取り入れられつつある。JMPRやEFSAでは、農薬代謝物の変異原性評価にインシリコ評価を活用し始めており、我が国においては、前述の食品用器具容器包装関連化学物質のPL制に伴う既存物質のリスク評価での活用が検討されている。

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