日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S16-1
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シンポジウム16
化学物質によるラット胎盤の形態学的変化
*古川 賢
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抄録

胎盤は胚子/胎児が母体の子宮内で発生・発育するための特別な組織で、胎児由来の絨毛膜と母体の子宮内膜由来の脱落膜からなる胎児母体器官である。胎盤の主要な機能は、胚子/胎児の子宮壁への定着、母体と胚子/胎児間の血液循環、代謝、ガス・栄養物質の物質輸送、老廃物除去、胎盤関門、内分泌能及び母体免疫系からの胚子/胎児への攻撃防御などである。胎盤は妊娠の進行とともに着床後、短期間で急速に増殖・発達し、非常に血流量の豊富な器官であり、その機能は多彩であることから、トキシカントの影響を受けやすい。さらに、胎盤の機能低下及び障害は、胎児の発生・発育に重篤な影響を及すことから、胎盤は胎児発生毒性を評価する上で重要な組織である。一方、胎盤の形態は動物種によって異なり、絨毛の分布及び絨毛と子宮内膜との結合様式などにより分類される。ヒトとラットは共に絨毛の分布より盤状胎盤、結合様式により血絨毛胎盤に区分されるものの、組織形態学的に両者は大きく異なり、ラットでの胎盤毒性影響をヒトに外挿する際には、十分な検討が必要である。さらに、ラットでは妊娠期間が短く、胎盤は母体/胎児由来の複数の組織が相互に関連して形成され、胎盤の形態は短期間で劇的に変化するため、トキシカントにより誘発される病変の形態は複雑であり、剖検時期及び曝露時期によっても大きく変わる。胎盤の機能低下/障害に起因した胎児毒性の機序解明には、胎盤病変の発現感受期と発現部位を同定し、経時的に病理組織学的検査を実施することが重要である。しかし、医薬/農薬の繁殖/生殖に関わる毒性試験において胎盤の毒性指標は胎盤重量のみである。本発表では胎盤の動物種差、ヒト及びラット胎盤の比較、ラット胎盤の構造とその特徴、並びにケトコナゾール、シスプラチン、タモキシフェン及びβ-ナフトフラボンなどの各種化学物質により誘発された胎盤の病理組織学的変化について述べる。

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