日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S18-5
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シンポジウム18
ヒト試料を用いたin vitro試験によるヒト特異的肝毒性予測
*臼井 亨
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抄録

ヒト特異的肝毒性(iDILI, idiosyncratic Drug-Induced Liver Injury)は、動物を用いた通常の非臨床安全性試験では検出できず、臨床試験開始以降に顕在化する副作用である。当社においても2000年代にiDILIによる候補化合物の開発中止を経験し、それ以来iDILIリスクの非臨床での評価に取り組んできた。当時からリスク因子と指摘されていた反応性代謝物生成の指標として、放射標識化合物を利用してヒトin vitro試験系でタンパクへの共有結合量を測定し、それを用いてiDILI回避のための社内クライテリアを設定した。その後、同評価をより早期に実施するため、非放射標識化合物を用いて共有結合量を予測する手法を確立し運用している。反応性代謝物の他にも、レトロスペクティブな調査から、胆汁酸排泄トランスポーター阻害及びミトコンドリア毒性がiDILIのリスク因子であることが知られている。しかし、これらのin vitroパラメーターでiDILI発現メカニズムを明確に説明できるわけではなく、その評価結果は偽陽性や偽陰性を含むことを前提としたリスク回避の指標である。本発表では、この偽陽性、偽陰性を改善するために獲得免疫型のiDILI評価に取り組んだ事例を紹介する。本評価においては、Human Leukocyte Antigen(HLA)に着目した。HLAは獲得免疫におけるT細胞への抗原提示を担う本体であり、特定のハプロタイプを保有する患者でiDILIの発症頻度が高い。患者が保有するリスクHLAと同じHLAハプロタイプをもつ健常人血液を用いて、患者でのin vitroフェノタイプが再現できるT細胞実験系が報告されていることから、同様の手法でiDILI予測が可能かを検討したので、その結果を紹介する。

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