主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
非臨床医薬品安全性試験における心毒性評価にヒトiPS細胞を利用するために、国際的な共同研究および個人研究が推進されている。その結果、分化心筋の活動電位のばらつきなどの課題が次々と克服され、催不整脈性を評価するためのヒトモデルとしての実用化に大きな期待がかかっている。次世代の試みとして、抗がん剤などによる心不全発症を調べる評価系の構築に注目が集まっており、力学的機能における細胞の品質保証が新たな課題となっている。我々は、MFI (Motion Field Imaging)手法を用いて、ヒトiPS心筋の拍動動画から、心房・幼若マーカー(MLC2a)もしくは心室マーカー(MLC2v)でラベルされた細胞ごとの収縮機能を識別することに成功した。そこで、本研究では、細胞型ごとの薬物応答を比較解析することにより、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いて心不全毒性を調べる際の課題を洗い出すことを目的とした。その結果、βアドレナリン性受容体刺激に対する応答は、収縮速度に関してはMLC2v型でのみ見られることを見出した。今回、MFI手法を活用して、心筋収縮のβアドレナリン性調節における細胞株間差を検出することに成功した。本データは、ヒトiPS細胞を用いた心不全毒性評価系の構築において考慮すべき課題を提示すると思われる。