日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S31-3
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シンポジウム31
NGSによるノンバイアスな変異解析の現状と将来展望
*戸塚 ゆ加里
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抄録

医薬品などの化学物質開発の際に、遺伝毒性の評価は必要不可欠である。現在汎用されているin vitro, in vivo遺伝毒性試験は、いずれも標的遺伝子の変異に伴う表現型を指標としているが、こういった手法では結果にバイアスがかかることが以前から懸念されてきた。

一方、次世代シークエンサーを用いた大規模ゲノム解析が盛んに行われるようになり、腫瘍中に存在する体細胞変異の全容を解明することが可能な時代となった。このような解析手法は、化学物質に曝露した正常組織、培養細胞やモデル生物にも応用でき、これらサンプルの全ゲノム/エクソン解析を行なう事で、ノンバイアスかつグローバルな変異解析が可能となり、従来の遺伝毒性試験法を補完する次世代の遺伝毒性試験法として期待されている。さらに、次世代シークエンサーにより得られた各々の変異スペクトルの内訳を、変異箇所の前後を含んだ周辺配列により分類したものを変異シグネチャーと呼ぶ。変異シグネチャーは環境暴露を反映することが知られている。したがって、この情報を用いることで、化学物質が誘発する遺伝毒性のAdverse Outcome Pathwayを得ることも可能となり、より精度の高い遺伝毒性評価が可能になることが期待されている。

本シンポジウムでは、次世代シークエンサーによるノンバイアスな変異解析の現状について紹介するとともに、化学物質の遺伝毒性評価への応用に関する展望についても述べる予定である。

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