日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S31-2
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シンポジウム31
生殖細胞変異原性と次世代個体ゲノムへの影響
*増村 健一
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抄録

化学物質等の遺伝毒性とその健康影響を明らかにするためには生体に誘発される遺伝子突然変異を検出しその特徴を解析することが重要である。標的組織における体細胞突然変異の誘発はがんの要因と考えられている。また、生殖細胞突然変異は次世代個体への遺伝的影響の要因となり、集団の遺伝的多様性や進化をもたらすと同時に、遺伝病等の原因にもなり得る。生殖細胞変異原物質がヒトの遺伝的疾患を誘発する証拠はないものの、ヒトの大規模ゲノム解析研究が進む中で多くの疾患関連遺伝子変異が同定されており、その多くは生殖系列突然変異である。ヒトゲノムには世代あたり数十個の一塩基変異(SNVs)が新たに生じると考えられている。親の加齢に伴い、生まれた子のゲノム中の突然変異(de novo mutation)が増加することがわかってきたが、遺伝的要因および環境的要因の関与の程度は不明である。我々はレポーター遺伝子導入マウスおよび次世代シークエンサーを用いた解析によって、雄性生殖細胞および次世代個体のゲノムにおける遺伝子突然変異頻度を算出し、遺伝的影響の測定を試みた。遺伝毒性発がん物質であるENUを投与した雄gpt deltaマウスの生殖細胞に生じた点突然変異は、発生段階の選択によって抑制されず次世代個体ゲノムに遺伝することが示唆された。ゲノム解析の手法は生殖細胞変異原性の測定に有用であり、個体と集団における遺伝的負荷を明らかにするための重要な情報を与えると考えられる。

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