日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S7-1
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シンポジウム7
ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療の開発動向
*平松 直人内田 恵理子犬飼 直人岩井 健一渡辺 武志川崎 秀吉田村 幸太郎吉見 英治高橋 則彦伊原 辰哉藤本 和則山下 晃人小野 貴士高木 観小野 竜一内藤 雄樹井上 貴雄
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抄録

今日、遺伝子治療の発展は目覚ましく、既に複数の遺伝子治療製品が承認されている。しかし、従来の遺伝子治療は基本的に欠失遺伝子を補完する、若しくは新たな遺伝子を付加する治療法であるため、機能獲得型変異によって発症する遺伝性疾患に対しては有効な治療法ではない。一方、ZFN、TALENならびにCRISPR-Cas9等のゲノム編集技術を用いる遺伝子治療(ゲノム編集治療)では、DNAの二本鎖切断(double-strand break:DSB)とその後のDNA修復機構に伴う変異導入によって、機能獲得型変異を有する遺伝子を破壊することが可能である。さらに、標的となる変異遺伝子と相同な配列を有する正常遺伝子をゲノム編集ツールと同時に加えることで、相同組換えを誘起し、変異遺伝子を正常遺伝子に置換することも可能である。ゲノム編集治療はこれまでのモダリティでは難しかった遺伝子の「破壊」あるいは「置換」が可能であることから大きな注目を集めており、その研究開発が急速に進展している。ゲノム編集治療は従来の遺伝子治療と比べて遺伝子改変の特異性という観点では安全性が高いと考えられるが、一方でDSBを誘導するため、目的外の遺伝子を切断するリスクや切断部位に想定外の配列が挿入されるリスクなど、従来の遺伝子治療とは異なる安全性上の課題が存在する。

このような急速な技術革新とこれに伴う新しい規制整備が求められる背景のもと、日本医療研究開発機構(AMED)医薬品等規制調和・評価研究事業における「ゲノム編集を利用した遺伝子治療用製品の安全性評価に関する研究」班、および、日本製薬工業協会において結成された「ゲノム編集治療安全性タスクフォース」が連携して開発動向の調査研究ならびに安全性評価の考え方に関する議論を行ってきた。本演題では、その活動の一環として調査したゲノム編集治療の開発動向について概説する。

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