主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
医薬品の製造管理及び品質管理に関する要件が纏められたGMP(Good Manufacturing Practice)は、2002年8月のUS-FDA 「21世紀の医薬品CGMPイニシアチブ」において提唱されたリスクベースアプローチに基づき、世界の査察当局によって根本的な改訂が進められてきた。こうした一連の改定は、2018年12月のPIC/S(EU)-GMPの改定で完結し、日本のGMP省令も、この改定と整合性を取る事が望まれており、現在、検討されている。
GMPの基本コンセプトである交叉汚染防止要件も、こうしたリスクベースアプローチによる改定によって、大きく変貌した。従来の薬効の分類による専用設備の要求から、薬理学的並びに毒性学的データを基に交叉汚染限度値を設定し、それを指標として、交叉汚染による患者への健康障害リスクを評価することが要求されるようになった。それに呼応して、交叉汚染限度値を設定するためのガイドライン「GUIDELINE ON SETTING HEALTH BASED EXPOSURE LIMITS FOR USE IN RISK IDENTIFICATION IN THE MANUFACTURE OF DIFFERENT MEDICINAL PRODUCTS IN SHARED FACILITIES」もFDA、EMAの協力によりPIC/Sから発効された。
製品Aに混入した別の原薬Bによって、製品Aを投与された患者が健康障害を引き起こすリスクを評価するために、その潜在的能力(交叉汚染限度値)を毒性学的に設定することは、GMP改定のコンセプトであるScientific Risk Based Approachに合致するものである。
本講演では、こうしたGMP交叉汚染防止要件の経緯を報告し、交叉汚染限界値の設定における国内医薬品業界の現状とその課題について報告する。