日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-11S
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ポスターセッション
ジフェニルアルシン酸ばく露によるヒト小脳由来正常アストロサイトにおける脳内サイトカインの分泌亢進
*佐々木 翔斗都築 孝允湯川 和典根岸 隆之
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抄録

ジフェニルアルシン酸(DPAA)は茨城県で発生した地下水ヒ素汚染事故の主因物質で、この井戸水を使用した住民は小脳症状を発症した。培養ラット小脳由来正常アストロサイト(NRA)においてDPAAばく露(10 μM、96時間)はMAPキナーゼのリン酸化、転写因子・酸化ストレス応答因子の発現誘導、および脳内サイトカイン(MCP-1、adrenomedullin、FGF-2、CXCL1、IL-6)の分泌亢進等の異常活性化を引き起こす。一方で、培養ヒト小脳由来正常アストロサイト(NHA)はDPAAに対して抵抗性が高く、96時間ではより高濃度(50 μM)、10 μMではより長時間(288時間)のばく露によりNRAと同様のリン酸化亢進等の細胞内異常活性化を示す。本研究では、DPAAばく露によりNHAから細胞外に分泌されるサイトカインの評価を行った。NHAに対して10、20、および50 μM DPAAを96時間、または10 μM DPAAを288時間ばく露し、培養液中のサイトカインを市販の抗体アレイを用いて網羅的に評価したところ、分泌亢進は25種類、低下は3種類のみと示唆された。さらに、MCP-1、adrenomedullin、FGF-2、CXCL1、IL-6、およびIL-8についてそれぞれELISAを用いて評価したところ、50 μM DPAAで96時間または10 μM DPAAで288時間ばく露によりその分泌が亢進した。以上の結果から、NHAにおいてもDPAAばく露によりNRAと同種のサイトカインの分泌亢進が生じ、さらにNHAではIL-8の分泌も亢進した。DPAAばく露によりアストロサイトから過剰分泌されるこれらのサイトカインが周囲の神経細胞、ミクログリア、脳血管、もしくはアストロサイト自身に影響を及ぼし小脳症状を発症させる可能性がある。

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