日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-14S
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ポスターセッション
U251神経膠芽腫細胞株における光線力学療法の抗腫瘍効果に対する亜ヒ酸の増強効果
*清水 悠吏矢野 佑華藤井 和奈高橋 勉恒岡 弥生篠田 陽秋元 治朗藤原 泰之
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抄録

【目的】神経膠芽腫は悪性度の高い脳内に発生する固形がんの一種で、効果の高い治療法の開発が求められている。我々はこれまでに、がんへの集積性を有する光感受性物質タラポルフィンナトリウム(talaporfin sodium: TS)とレーザー光照射による光化学反応を利用した光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)が、神経膠芽腫に対して抗腫瘍効果を示すことを明らかにしてきた。ところで、急性前骨髄急性白血病の治療薬として使用されている亜ヒ酸(三価の無機ヒ素化合物)が種々の固形がんに対しても抗腫瘍効果を示すことが報告されているが、神経膠芽腫に対する抗腫瘍効果は十分に検討されていない。本研究では亜ヒ酸の各神経膠芽腫由来細胞に対する抗腫瘍効果を調べるとともに、亜ヒ酸がTS-PDTの抗腫瘍効果に与える影響について検討した。

【方法】3種のヒト神経膠芽腫細胞株(U251、A172およびT98G)を亜ヒ酸(0-40 µM)存在下で24時間培養した。別に、U251をTS(0, 10, 20 µM)および亜ヒ酸(0, 5 µM)で2時間処理後、レーザー光(664 nm、1 J/cm2)を照射し、同濃度の亜ヒ酸存在下で24時間培養した。細胞生存率はCCK-8アッセイによって測定した。

【結果・考察】今回検討した3種の神経膠芽腫細胞株のうち、亜ヒ酸はU251に対してのみ細胞生存率を低下させたことから、亜ヒ酸が奏功を示す神経膠芽腫のタイプが存在する可能性が示唆された。さらに、U251を細胞毒性が認められない濃度の亜ヒ酸存在下でTS-PDT処理することにより、TS-PDTによる抗腫瘍効果が増大されることを見出した。したがって、亜ヒ酸は、U251神経膠芽腫細胞株に対して選択的に抗腫瘍効果を発揮するとともに、TS-PDTのU251細胞に対する抗腫瘍効果を増強させる作用を有する可能性が示唆された。

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