日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-16
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ポスターセッション
γ-H2AX免疫染色を用いた芳香族アミンのラット膀胱に対する傷害性および発がん性短期評価手法
*豊田 武士山田 貴宣松下 幸平赤根 弘敏森川 朋美小川 久美子
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抄録

【背景と目的】芳香族アミンは染料・顔料の製造原料として汎用されるが、オルト-トルイジンおよびオルト-アニシジン等、多数の膀胱発がん物質が含まれる。一方で、膀胱に対する傷害性・発がん性が不明な芳香族アミンも多く、効率的な評価手法開発が望まれている。本研究では、芳香族アミンが膀胱粘膜に及ぼす影響について、28日間反復経口投与試験で得られた膀胱組織を用いた病理組織学的・免疫組織化学的解析による評価手法を検討した。

【方法】6週齢の雄F344ラット(各群5匹)に、計31種の芳香族アミンを28日間反復経口投与し、膀胱における病理組織学的検索およびDNA損傷マーカーであるγ-H2AXの免疫染色を実施した。投与用量は原則として、各物質の短期投与における最大耐量として設定した。

【結果と考察】検索した芳香族アミンのうち14物質が病理組織学的に膀胱傷害性を示し、その傷害パターンはオルト-トルイジンに類似した壊死・出血等の急性病変を惹起するものと、オルト-アニシジンに似た単純過形成を誘導する2型に大きく分類された。また、既知の膀胱発がん物質11種のうち9物質が、γ-H2AX陽性尿路上皮細胞の増加を誘導した(感度81.8%)一方、非膀胱発がん物質である14種のうち12物質は陰性であった(特異度85.7%)。偽陽性を示した2物質(4-クロロ-オルト-トルイジン、4,4'-メチレンジアニリン)は、いずれもがん原性試験で用いられた発がん用量よりも高い濃度でγ-H2AX形成を増加させ、高用量曝露では発がん性を示す可能性が示唆された。膀胱に対する毒性が不明な6物質のうち、3種(オルト-トルイジン代謝物2種を含む)が膀胱粘膜傷害およびγ-H2AX形成増加を誘導し、これらの物質が膀胱発がん性を有する可能性が示唆された。以上より、既存の28日間反復投与毒性試験にγ-H2AX免疫染色を組み込むことで、芳香族アミンの膀胱傷害性および発がん性を短期間で検出し得ることが示された。

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