日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-90
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ポスターセッション
雄ウサギを用いたサリドマイド経口投与による血漿から精漿中への移行評価
*桑形 麻樹子高島 宏昌羽田 亮田中 加奈子長谷川 拓郎山崎 浩史北嶋 聡
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抄録

催奇形性懸念のある医薬品服用時の男性避妊期間及びその必要性を設定するエビデンスに基づいた非臨床試験法は確立されていない。そこで、医薬品適正使用を目的とし、雄性生殖能を介した新規発生毒性試験法開発の一環として、雄性精液を介した雌性膣内経路による催奇形性発現を評価するウサギ試験法を立案中である。本研究はモデル薬物として催奇形性物質サリドマイドを選択し、雄ウサギ(Kbl: NZW)に経口投与後の血漿および精漿中濃度時間推移を検討することを目的とした。サリドマイド2.0、250および500 mg/kg を一群3匹の雄性ウサギに単回経口投与し、経時的に血漿中および精漿中のサリドマイドおよびヒト不均衡性代謝物5-水酸化体サリドマイドを液体クロマトグラフ-質量分析計により測定した。サリドマイド2.0 mg/kg群では、投与2時間後に最大血中濃度を示し、投与24時間後には検出限界まで消失した。一方、250 および500 mg/kg群では、投与7時間後に最大血中濃度を示し、24時間時点まで高濃度を維持した。血漿中5-水酸化体サリドマイド濃度は、いずれもサリドマイド濃度の約1/100程度の低値を示した。ウサギ精漿中のサリドマイドおよび5-水酸化体サリドマイドもウサギ血漿中と同様の濃度推移を示し、両者の血漿中と精漿中の濃度比に特段の濃縮は認められず、0.5から1.1の範囲内であった。以上の結果から、サリドマイドの経口投与により血漿中と概ね同程度のサリドマイドと5-水酸化体サリドマイドの受動的な精液移行が明らかになった。ウサギへの経口投与によるサリドマイド動態評価の過程で、反復投与時と比較し、単回投与時にはサリドマイドの血中曝露が継続する知見も得られた。これらの薬物動態特性を基盤情報とし、雌性ウサギ膣内へのサリドマイド投与試験をさらに推進する予定である。

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