日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-1
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シンポジウム10
遺伝子治療に関する概論及び開発状況
*天水 大介
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抄録

2000年代初頭のレトロウイルスベクターによる造血幹細胞遺伝子治療において,導入遺伝子により白血病を誘発するという重篤な副作用が認められたことから,世界的な遺伝子治療の研究開発はしばらく停滞した。しかしながら,2010年前後から臨床試験の成功例が相次ぐようになり,その結果,新規治療法として複数の遺伝子治療用製品が承認され,遺伝子治療が実用化され始めている。

遺伝子治療は大別すると,目的遺伝子を搭載した遺伝子治療薬(ウイルス或いはプラスミドベクター)を投与する“in vivo遺伝子治療”,遺伝子組換え或いは腫瘍溶解性ウイルスを投与する“in vivoウイルス治療”及び標的細胞を取得し治療に寄与する遺伝子を導入した遺伝子導入細胞を投与する“ex vivo遺伝子治療”がある。2020年までに,in vivo遺伝子治療として,アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus:AAV)ベクターを用いたGlybera,Luxturna及びZolgensma,プラスミドベクターを用いたCollategene,in vivoウイルス治療として,腫瘍溶解性ウイルスを用いたImlygic,並びにex vivo遺伝子治療としてキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)-T細胞療法(CAR-T細胞療法)を用いたKymriah,Yescarta及びTecartus,造血幹細胞遺伝子治療法を用いたStrimvelis及びZyntegloが遺伝子治療用製品として世界で承認されている(Glyberaは2017年に販売終了)。

FDA,EMA及びPMDAで承認されている遺伝子治療用製品の審査報告書を参考にし,これまでの開発状況を簡潔にまとめ,あわせて安全性評価と密接な関係がある薬物動態評価に関する試験パッケージ等の調査結果を報告したい。

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