日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S9-4
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シンポジウム9
毒性OmicsとAIによる慢性毒性予測
*菅野 純相﨑 健一小野 竜一北嶋 聡
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抄録

 反復曝露の解析を、網羅的分子メカニズムに依拠した毒性予測と評価の迅速化、高精度化を目的とするPercellome Projectにおいて進めている。遺伝子欠失マウスと野生型マウスの遺伝子発現の比較検討が端緒となり、全動物に同量の検体を毎日、4乃至14日間反復投与し、次の日に用量を振って最終投与を一回行い、その2、4、8、及び24時間後の遺伝子発現測定を行う「新型」反復曝露プロトコールを考案し、これまで、各種十数化学物質について肝の網羅的遺伝子発現データを得た。その結果、反復曝露による影響が数日で定常化すること、遺伝子発現は二つの成分、即ち、曝露の都度に変化を示す「過渡反応」と、曝露を重ねるに連れ発現値の基線が徐々に移動する「基線反応」に分解できる事を見出した。加えて、四塩化炭素、バルプロ酸ナトリウム、クロフィブレート、および溶媒として用いるコーンオイルについては、14日反復投与後の遺伝子発現情報に加え、全ゲノムDNAメチル化測定(WGBS)及び4種類のヒストン修飾(H3K4me3, H3K27me3, H3K27Ac, H3K9me3)に対する染色質免疫沈降(ChIP-Seq)を同一検体から得ての対比を網羅的に進める準備を開始した。

 基線反応の変化、すなわち、反復曝露により遺伝子発現が増加、あるいは低下した遺伝子の翻訳開始領域のDNAメチル化とヒストン修飾を検討した結果、DNAメチル化の状態は14日間の曝露では大きくは変化しないこと、基線反応がヒストン修飾の類型化によりある程度説明可能であることを確認した。

 本発表では、基線反応と過渡反応の組み合わせを考慮した反復曝露影響のAI動員による解析の方策を提起し多臓器連関を含めた慢性毒性予測について展望する。(厚生労働行政推進調査事業費による)

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