日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-1
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シンポジウム13
ヒトES及びiPS細胞を用いた腎毒性予測評価系の検討
*大槻 博礼山根 順子猪俣 孝二三輪 綾子塩路 哲平荒木 徹朗日浦 政則藤渕 航
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抄録

医薬品の研究開発では非臨床で様々な細胞や実験動物を用いてヒトにおける安全性を予測・評価するが、非臨床から予見できなかった有害事象により、臨床試験が開発中止に至るケースも散見されている。その原因として、in vitro評価では生体や臓器を十分模倣できず適切な評価ができないこと、in vivo評価ではヒトと動物の種差等が挙げられる。このような背景から適切な評価系の確立と臨床外挿性の向上が強く求められている。

腎臓は20種類以上の多様な細胞が複雑な構造(ネフロン)を形成することで、老廃物や薬物の代謝・排泄・再吸収といった機能を担っている。この過程において薬物やその代謝物の多くは腎臓を構成する各種細胞に曝露されることが知られている。しかし、生体における腎臓の機能を保ったまま培養が可能なヒト由来細胞がない上に、ネフロンの構造及び機能を模倣して培養することができないため、汎用性のあるin vitro腎毒性予測系の構築が望まれている。

近年、新たなin vitro評価系として、ES及びiPS細胞から分化誘導した細胞を用いた評価系が注目されており、分化細胞やオルガノイド培養を用いた評価系の構築が進んでいる。一方、これらの評価系には培養に時間を要すことや分化操作間差が生じることが課題として挙げられている。

そこで我々は、未分化のヒトES細胞における遺伝子発現量及び遺伝子ネットワークに着目し、機械学習を用いた腎毒性予測評価系の構築を試みた。具体的には、in vitroで評価が困難な腎毒性物質及び神経毒性物質を細胞に処理し、NGS解析により特徴的な遺伝子発現及び遺伝子群を抽出し、遺伝子ネットワーク解析により各遺伝子発現パターンを比較した。本発表ではES細胞で検討した結果に加え、ヒトiPS細胞を用いて同様のアプローチを検討した結果を紹介する。

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