日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S12-5
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シンポジウム12
製品原料開発を推進するリードアクロスの新展開 - in silico/in vitro studyとの連動 -
*額田 祐子
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抄録

近年、化学物質の安全性評価において、動物実験に依らない技術の台頭が著しい。しかし、全身毒性に関しては、その応答が複雑であることから、単一の試験系での毒性評価が困難である。種々の手法を組み合わせた統合的評価アプローチ(IATA)による評価の必要性が提唱されているものの、標準化された手法はいまだにないのが現状である。そのような中、既存の安全性に関するビッグデータを活用した安全性の予測技術として、リードアクロスが注目を集めている。リードアクロスは、類似構造を有するソース化合物の安全性情報をもとに、ターゲット化合物の毒性を類推する手法であり、動物実験に依らず安全性を判断する有用な技術としてすでにREACH申請など多くの場面で活用されている。しかし、実際の評価場面においてはしばしば課題に直面する。多くの場合、構造と毒性は相関するが、時として軽微な構造変化が大きな毒性変化を及ぼすことがあるためである。リードアクロスの精緻化ひいては正確な安全性判断のためには、その変化を及ぼすルールを的確に見出し予測に反映することが必要である。

我々は、in silicoによるターゲット臓器探索、オミクス解析による主要キーイベントの理解、in vitro実験によるキーイベントの定量的理解により、構造情報ではなしえなかった毒性発現機序を考慮した精緻なリードアクロスによる評価の体系化に取り組んでいる。これまでに、事例研究を通じて、体内動態、ターゲット臓器での毒性発現などを上記技術で考慮することにより、精緻な毒性予測を実現することを確認している。 

本発表では、精緻な定量的リスクアセスメントを実現するためのリードアクロスの新展開につき、世の中の研究動向と照らし合わせながら弊社内での評価戦略について紹介すると共に、化学物質の動物実験に依らない安全性評価における課題や将来展望について議論したい。

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