日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S16-3
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シンポジウム16
こどもの自閉症(発達障害)は増加しているのか?
*市川 剛
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抄録

 自閉症は、自閉症スペクトラムとして捉えられるようになり、他の精神疾患とも並存しうるとされている。近年、世界中でその頻度の増加が報告されている。頻度の増加の原因としては、①より注意が払われるようになった②診断基準の拡充③良い診断ツールの確率④報告頻度の上昇などが指摘されているが、いずれも持続的な頻度の上昇を十分に説明し得ない。そもそも自閉症は遺伝的素因と環境素因により発症するとされている。遺伝素因が比較的変化しにくいとすると、環境要因の変化に原因を求めるのは自然な流れである。

 ところでDOHaD(developmental origin of health and disease)学説が最近注目されている。胎内から出生後早期の環境が将来の疾患のなりやすさを規定するという学説で、多くのnon-communincable diseases (非感染性疾患)に関与することが明らかになっている。その中には自閉症も含まれており、特に影響の受けやすい時期(critical window)は妊娠中(胎児期)であることが指摘されている。その時期の環境要因として母胎の低栄養やストレス、疾患や薬剤の服用などが種々の疾患や児の胎内成長に影響することが知られている。しかし、世界中で自閉症が増加していることの説明に耐えうるものは何かという視点からは、農薬を含む化学物質による大気汚染や土壌汚染による暴露の増加の影響がどうかというのは非常に魅力的である。

 本日は、ネオニコチノイド系農薬と胎児成長との関係とその後の展望、自身の小児科臨床での自閉症の困り感の変化などについて中心にお話しする予定である。また、乳幼児期の環境と自閉症の関係についても最新の知見を織り交ぜながら、一緒にこの問題について考えていければと思います。

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