網羅的分子メカニズムに依拠した毒性予測と評価の迅速化、高精度化を目的としたPercellome Projectにおいて構築したPercellome Toxicogenomics Database 中の発癌関連物質のうち、その作用機序が異なることが想定されている物質を選択し、それらのマウス肝に対する単回経口曝露後の遺伝子発現変動、一部の物質については4日反復曝露後の遺伝子発現変動(新型反復曝露プロトコールによる)を比較検討し、それらのエピジェネティクス作用の特性を解析した。検討対象としてN-ethyl-N-nitrosourea(ENU)、Diethylnitrosamine(DEN)、3-Methylcholanthrene(3MC)、2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)、Pentachlorophenol(PCP)、Phenobarbital sodium(PB)、Arsenite sodium(As)、Carbaryl(Cb)、Carbon tetrachloride(CCl4)、Azacytidine(Aza)の単回経口投与後の2、4、8、及び24時間後の発現変動遺伝子リストを比較し、独自開発分析ツール及び既知情報(IPAを含む)による作用機序解析を行った。その結果、AhRを介するシグナルを共有するTCDDと3MCの差分比較から3MCのPB要素およびPCP要素の抽出、AsとPCPのNrf2系の共通性、AsとPBの同一シグナルの時間的相違、DENとCbのp21、Trp53inp1等のシグナル共通性、AzaとENUのMafb誘導、p53系シグナルの共通性、CCl4の特殊性等が、導出された。これらの関連性を裏付ける上流因子や新型反復曝露試験時の基線反応・過渡反応との関連を報告する(厚生労働科学研究費補助金による)。