日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-5
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シンポジウム22
カニクイザルにおける薬物代謝酵素の同定・解析
*宇野 泰広山崎 浩史
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抄録

カニクイザルは進化的にヒトに近く、薬物代謝試験や安全性試験で使用される重要な非ヒト霊長類であり、その薬物代謝パターンは概してヒトに近いことが知られている。しかし、稀ではあるがヒトと異なる場合があり、その一因はチトクロムP450 (P450、CYP) を始めとする薬物代謝酵素における種差であると考えられる。そこで、その原因を調べるために、我々はカニクイザルにおいてP450を網羅的に同定・解析してきた。その結果、多くの基質を調べるとP450代謝がカニクイザルとヒトで良く似ているものの、ヒトにはないカニクイザルCYP2C76が様々な薬物の代謝に関与しており、またカニクイザルCYP2C9やCYP2C19が一部の薬物でヒトと異なる代謝を示すことが明らかになった。さらにP450以外の薬物代謝酵素を解析した結果、P450と同様に薬物代謝パターンは概してカニクイザルとヒトはよく似ているものの、一部の分子種や基質では異なることが明らかになった。とくに、P450と同様に重要な薬物代謝酵素であるUGTでは、UGT1A1の特徴がヒトとよく似ているのに対し、UGT1A6とUGT1A9は少し異なり、このことが近年みられる医薬品開発におけるUGT代謝のサルとヒトの種差の一因となっている可能性が考えられる。他の薬物代謝酵素についても解析を行っており、本発表では、その知見についてもお示ししたい。

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