ヒト細胞加工製品の非臨床安全性評価に際しては、細胞成分の一般毒性評価及び造腫瘍性評価と、製造工程由来不純物及び副成分の安全性評価を検討する。さらに、キメラ抗原受容体(以下、「CAR」)を導入したCAR-T細胞などの遺伝子導入細胞については、「遺伝子治療用製品等の品質及び安全性の確保について」(令和元年7月9日付け薬生機発0709第2号)も参考にして非臨床安全性評価をする。ゲノム編集をした細胞加工製品の場合には、PMDAの科学委員会の「ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療用製品等の品質・安全性等の考慮事項に関する報告書」(令和2年2月7日)も参考にして、ゲノム編集に伴うリスクを評価する。
一般毒性については、効力に関連する毒性(オンターゲット毒性)と、意図しない毒性(オフターゲット毒性)を評価する必要がある。効力に関連する毒性の懸念がある場合には、効力が評価できる試験系での毒性評価を検討する。
造腫瘍性については、in vitro試験及び免疫不全動物を用いた造腫瘍性試験による評価を検討する。体細胞又は間葉系幹細胞由来の製品については、特段の懸念がない限り、動物を用いた造腫瘍性試験は省略できる。また、ヒトT細胞由来製品は、動物に投与した場合に移植片対宿主病(GVHD)が生じ、動物を用いた造腫瘍性評価が困難であることから、in vitro試験に基づく造腫瘍性評価を検討する。
製造工程由来不純物及び副成分の安全性は、可能な限り成分を把握した上で、ヒトへの安全性について、ヒトへの投与経験、非臨床安全性情報等に基づき評価する。
本講演では、PMDAで実施した治験相談などで開発者からのご質問が多い事項を中心に、現時点における細胞加工製品の非臨床安全性評価に関する考え方を解説したい。