手足症候群は抗がん剤治療時にみられる,手掌や足底などの四肢末端に発現する皮膚関連有害事象の総称である。手足症候群では掌や足底の発赤,腫脹,感覚異常等がみられ,悪化すると日常生活が制限される等,患者様のQOLを著しく低下させ,抗がん剤治療中断の原因の一つとなりうる。特に,殺細胞性抗がん剤及びキナーゼ阻害薬において,高頻度で発現することが知られており,症状・異常を早期に検出し,ケアおよび対症治療を開始することで,抗がん剤治療の完遂率が上がると考えられる。一方で,これらの抗がん剤によって引き起こされる手足症候群のメカニズムは不明であり,非臨床モデル動物に関する報告も少なく,メカニズムに基づいた治療法や予防法は確立されていない。
そこで,メカニズムに基づいた手足症候群の治療法及び予防法確立のために,モデル動物の検討に着手した。検討に際しては,臨床で手足症候群が報告されているいくつかの薬剤で検討を行い,ドキソルビシンのリポソーム製剤であるドキシル,フッ化ピリミジン系薬剤であるテガフールをラットに反復投与することにより,肉眼的・病理学的にヒトでの報告と類似した四肢の所見を得ることができた。本ワークショップにおいては,手足症候群についての概説及びこれまでに得られた非臨床動物における知見を紹介する。