日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-19E
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環境毒性の低減に寄与する茶粕廃棄物の新規活用方法について
*中村 武浩藤本 月音緒方 文彦川﨑 直人
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抄録

【背景・目的】

 水質汚濁に係る環境問題は,世界中で解決すべき課題としてSDGsにも含まれている。ヒ素の地下水汚染など,インド等の特定地域で人体に有害な事例が報告されており,現代においても未解決な汚染問題である。一方,染料は我々の衣食住を彩る着色色素として種々の産業に利用されており,染料排水は少量であっても特有の水質汚染を引き起こす。しかし,その排水規制は徹底されておらずCODによる総量規制のみに留まっているため,ずさんな排水処理を起源とする河川や湖沼での染料汚染が発生している。現在,これらの汚染は多額の費用や高度な設備を介して低毒化されているが,上述の問題事例に対する解決策となっていない。本研究では,廃棄物である茶粕を吸着剤として活用することで,処理コスト,適用環境,使用技術のいずれにおいても容易に採用可能な方法を模索し,その実用可能性を検証した。

【方法】

 茶粕は世界的に消費量の多い種類を筆頭に,21種類の茶葉から調製した(紅茶6種,緑茶4種,烏龍茶4種,ハーブ茶2種,健康茶5種)。茶葉3.0gを90℃の温湯200mlで抽出した後,放冷したものを吸着剤として使用した。吸着質として,染料についてはアニオン染料1種,カチオン染料4種を用い,有害金属としては一般排水基準が定められている6種(Cr(Ⅵ), Hg, As(Ⅲ, Ⅴ), Pb, Cd)を用いた。初濃度が異なる溶液に吸着剤を加え,平衡状態まで振とうし,ろ過後のろ液濃度を測定した。染料濃度は紫外可視分光光度計により,金属濃度は誘導結合プラズマ発光分光分析装置により解析した。

【結果・考察】

 多くの茶種において吸着適性が認められ,染料についてはカチオン染料に対し,金属についてはHg, Pb, Cdに対して高い吸着能を示した。また,茶葉の物理化学的特徴および吸着パラメータを測定し,吸着機構の予測に有用な知見を得た。本討論では,これらデータの詳細な解析結果と実用化に向けたさらなる検討実験について発表する。

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