日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-215
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γ-H2AXを指標とした化学物質の腎発がん性早期検出系の開発
*豊田 武士松下 幸平赤根 弘敏森川 朋美小川 久美子
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抄録

【背景と目的】齧歯類を用いた長期がん原性試験の代替法が求められる中で、我々はDNA損傷の鋭敏なマーカーとして知られるγ-H2AXを指標とした、発がん物質の早期検出法開発を目指している。本研究では、化学物質の腎臓に対する発がん性を、γ-H2AX免疫染色によって短期間で検出し得るかを評価するため、種々の腎発がん物質をラットに28日間反復経口投与し、腎尿細管上皮細胞におけるγ-H2AX形成の定量解析を実施した。

【方法】6週齢の雄F344ラットに、腎発がん物質であるhexachlorobutadiene (HCBD), 1-amino-2,4-dibromoanthraquinone (ADBAQ), dimethylnitrosamine (DMN), N-ethyl-N-hydroxyethylnitrosamine (EHEN)およびazoxymethane (AOM)を、それぞれ発がん用量または最大耐量として300, 10000, 500, 1000(3週目以降500)および40 ppmの用量で28日間混餌または飲水(EHEN/AOM)投与した。また、用量相関性を検討するため、遺伝毒性(tris(2,3-dibromopropyl) phosphate;TBPP)および非遺伝毒性(d-limonene;LIM)腎発がん物質を、それぞれ複数用量で28日間反復経口投与した。γ-H2AXの免疫組織化学的解析により、腎皮質および髄質外帯外層の尿細管におけるγ-H2AX陽性上皮細胞の割合を測定した。

【結果と考察】HCBD, ADBAQ, DMN, EHENおよびAOM投与群の尿細管上皮細胞におけるγ-H2AX陽性率は、皮質・髄質外帯外層のいずれも、対照群と比較して有意に増加した。また、TBPPおよびLIM投与群におけるγ-H2AX形成は、遺伝毒性の有無に関わらず、明瞭な用量相関性を示すことが明らかとなった。これまでの検討結果を総合すると、腎発がん物質14物質中13種がγ-H2AX陽性率の増加を引き起こした一方、非腎発がん物質7種ではいずれも対照群と同じレベルにとどまった。以上の結果から、γ-H2AX免疫染色によって化学物質の腎発がん性を、短期間かつ高い感度および特異度で検出可能であることが示唆された。

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