日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-34E
会議情報

ポスター
CYP1A1阻害作用に基づく芳香族炭化水素受容体(AHR)の活性増強作用に着目した、肝毒性の発現機序に関する研究
*依田 智美稲田 拓宮脇 出吉成 浩一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 肝毒性は医薬品候補化合物の非臨床安全性試験で散見される毒性の一つであり、ヒト外挿性の評価にあたってはその発現機序の理解が重要である。本研究では、雄ラットにおける4週間反復経口投与毒性試験において小葉中心性肝細胞肥大や小葉中心性脂肪滴蓄積等を伴う肝毒性が認められた自社化合物(Compound A)について、肝毒性の機序解明を試みた。4週間反復経口投与を実施したラットの肝臓を用いて遺伝子発現解析を実施したところ、Cyp1a1を含む芳香族炭化水素受容体(AHR)応答遺伝子の発現上昇が認められた。一方、レポーターアッセイにおいてCompound AのAHR活性化作用は限定的であった。そこで、CYP1阻害作用を有する化合物は、内因性AHRアゴニストの代謝消失を抑制することで内因性アゴニストによるAHR活性化作用を増強させることが知られていることから、Compound Aがこの機序によりAHRを活性化させる可能性を検証した。その結果、Compound Aはインビトロにおいてラット及びヒトCYP1A1に対する阻害作用を示し、さらにレポーターアッセイにおいて低濃度の内因性AHRアゴニストによるラット及びヒトAHR活性化作用を増強させた。以上の結果から、Compound Aによる肝毒性誘発にはCYP1A1阻害を介したAHR依存的な遺伝子発現の増強が関与していることが示唆され、これはヒトにも外挿され得ると考えられた。さらに、本機序はCYP1A1阻害作用を有する医薬品による肝障害発症の一因になり得ると考えられた。

著者関連情報
© 2022 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top