日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-37S
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化学物質のオートファジー活性への影響と肝脂肪化及び肝細胞肥大との関連性
*早川 由真保坂 卓臣志津 怜太菅野 裕一朗吉成 浩一
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抄録

 肝特異的オートファジー欠損動物は、肝肥大、非アルコール性脂肪性肝疾患、肝がんなどを発症することが報告されていることから、オートファジーを阻害する化学物質は肝脂肪化や肝細胞肥大などを引き起こす可能性が考えられる。しかし、化学物質のオートファジー活性への影響とこれら所見との関連は明らかではない。そこで本研究では、この関連性の解明を目的とした。

 オートファジーの進行に伴って分解され、オートファジーマーカーとして用いられているLC3タンパク質を、HiBiTタグ融合タンパク質として発現するプラスミドをマウス肝細胞株AML12に導入し、被験物質を処置後、細胞溶解液中のHiBiTタグ融合LC3による発光を定量することでオートファジー活性を評価した。被験物質にはラット2年間反復投与毒性試験結果を入手可能な農薬121種を用いた。

 雌雄いずれかで肝脂肪化を起こした農薬47種のうち、29種(62%)がオートファジー阻害活性を示した。雌雄いずれかでびまん性肝細胞肥大を起こした農薬36種のうち、24種(67%)がオートファジー阻害活性を示した。雌雄ともに肝脂肪化又はびまん性肝細胞肥大を示さなかった農薬52種のうち、17種(33%)がオートファジー阻害活性を示した。フィッシャーの正確確率検定の結果、肝脂肪化とオートファジー阻害、並びにびまん性肝細胞肥大とオートファジー阻害との間に有意な関連が認められた。また、オートファジー阻害活性の有無による肝脂肪化並びにびまん性肝細胞肥大のオッズ比はそれぞれ3.2及び4.0であった。 以上より、化学物質のオートファジー活性への影響が肝脂肪化及びびまん性肝細胞肥大と関連していること、オートファジーを阻害する化学物質はこれら所見を引き起こす可能性があることが示された。

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