日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-36S
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非アルコール性脂肪肝炎(NASH)オルガノイドモデルを用いた新規抗線維化薬の有効性・安全性の評価
*田邊 究臼井 達哉佐々木 一昭
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抄録

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、アルコールの摂取量とは無関係に脂肪肝を発症し、肝硬変や肝臓がんに進行する疾患である。国内に約500万人の罹患者が存在するが、現在NASHに特徴的な線維化病態を改善する有効な治療薬は見つかっておらず、新たな病態解明へのアプローチ法が求められている。また本疾患は、脂質代謝に関わるミトコンドリアにおける機能異常との関連性が示唆されている。当研究室では、NASHモデルマウスから、NASH病態を再現した肝臓オルガノイドの樹立に成功している。樹立したNASHオルガノイドの電子顕微鏡像では正常の肝臓オルガノイドに比べ、脂質の蓄積、ミトコンドリアの変形及び凝集、粗面小胞体の増加が観察された。このNASHオルガノイドを用い、ミトコンドリア関連因子の発現量と、ミトコンドリア由来活性酸素種(ROS)の産生量を測定した。その結果、正常肝臓オルガノイドに比べてミトコンドリア分裂タンパク質DRP1及び融合タンパク質OPA1の発現量増加と、ROS産生の亢進が見られた。そこで、ミトコンドリア分裂因子(DRP1)阻害剤であるMdivi-1を処置した際のNASHオルガノイドの形態変化及び線維化関連マーカーの発現量測定を行った。その結果、NASHオルガノイドにおける樹状様形態の発現を抑制し、線維化関連遺伝子であるCollagen-Ⅰ及びa-SMAの発現量を減少させることが明らかとなった。この結果から、Mdivi-1がNASHオルガノイドに対する抗線維化作用を有する可能性が示唆された。

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© 2022 日本毒性学会
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